一年を通じて1月から2月はボクの本業が忙しいため、この始めたばかりのブログも更新ができず悶々としておりました。今日は「透明水彩」という画材の楽しみについてお話ししたいと思います。
大人になって絵を描き始める以前は中学生くらいまでの美術の時間の記憶しかありませんでしたから、ボクは水彩画といえば画用紙にたっぷりと絵の具を塗りたくって描くことこそがお絵描きの王道かと思っていました。しかし、透明水彩の入門書を読んでみるとその書き方は全く違ったものでした。まずパレットに透明水彩の絵の具を各色ねり出して数日置いておき、その後硬くなった絵の具を使うのです。このパレット上の硬くなった透明水彩の絵の具に水を湿らせた筆をそっと撫でるようにし、その筆先についた絵の具を水彩紙の上に走らせるんですね。もしくはあらかじめ水彩紙の上に水だけを塗り、そのあと硬くなった絵の具の上をなぞった筆でサラサラと色をのせていくんですね。のせる、というか滲ませていくんですね。
これはボクの中で驚くべき常識の転換でした。そして透明水彩の一番の魅力は何といっても他の画材には見られないこの「滲み」です。中学生くらいまでの、ベタベタと滲ませもせず厚塗りの絵を描いていた自分は何だったのかと後悔しました。またその当時美術を受け持ってくれた先生は生徒の自由に書くことが大事だとお考えだったのでしょう。でもボクの絵の具の厚塗りに目をつむってしまわれず、もう少し透明水彩の本質を教えてくれていたら、と思いました。
大人になってお絵描きを始めてから数年、ボクは誰かプロの方に教えてもらっているわけではないので、近頃ようやく透明水彩の扱い方また楽しさがわかってきた、というところなのです。そんなわけで上記の絵、タイトルは「いつか見たトウガラシ」なのですが、この作品では気ままに透明水彩で遊んでみました。いや、こんな風に見えたのです。トウガラシといえば赤という決まりがあるわけでもなく、手に取ったトウガラシにはちょっとした宇宙が見えた気がしたのです。でもそれがお絵描きの楽しさ、自由に感じたものをアウトプットしてボクの感じた世界を表現して伝えることができるのが透明水彩という画材を用いたお絵描きや作品づくりだったりするようです。
透明水彩とは不思議で魅力の尽きない技法であり画材であります。何か具象となるものを描かずとも、紙の上で何種類かの絵の具を用いてそれを滲ませるだけで作品になってしまいます。誰が見ても「わぁ、きれい」と声を漏らすこと請け合いです。鉛筆画やアクリル絵の具などとは良い意味で明らかに異なる画材なのです(と、少なくともボクはそう考えています)。
滲ませて乾かして、また滲ませて乾かして・・・。あなたも日常のルーチンワークに疲れたら、透明水彩という画材で自由に気ままにその滲みを楽しんでみてはいかがでしょうか?
2024年2月13日 こけのきもち