少し間が空きましたが、相変わらず日常では絵を描くことのいろいろについて考えることの多い生活を送っております。ボクは仕事の関係上、2月は何かと忙しくお絵描きをする時間も限られてしまっているのですが、その中で近頃、変化があったことといえばSNS等でもAIによる作画の案内や宣伝が妙に多く入り込んできたことでした。お絵描きについてボクは、透明水彩を始め鉛筆画なども描き始めから仕上げまでそれなりに時間のかかるものだと認識しているのですが、それら宣伝や広告によれば短時間にまるでいっぱしの画家が描いたような絵ができてしまうとのこと。もともとボクは新しモノ好きなところがあるようで、今月はほんの少しこのAIによる作画についてネットで触れてみたのでありました。
AIによる作画って、いったいどのように描くのだろうと思っていたのですが、説明を見てみると言葉で描きたい絵の指示を出すと、AIがネット上の情報を集めその指示に沿った映像や絵を作り出すのが一般的なAIによる作画手法、なのですね。具体的にはプロンプトと呼ばれる呪文?を表現したいものを単語と句読点で表現し打ち込み、あとはAIが勝手に作画するのを待つだけという感じでした。試しボクは「柴犬」の絵をAIに描かせてみることにしました。
上の絵がそれです。AIが描いた?柴犬です。
結果、AIというものは驚くほど速く簡単にそれなりの絵を作るしまたそれなりの緻密さを持った絵を描くことがわかりました。しかし、日常アナログな絵を描いていて細部までこだわりのある人にはAIはまだまだ虚構感が強い上、細部に至っては「これはちょっと自分が思い描いている絵ではないな」感がぬぐえないものでした。何枚かAIに作らせてみましたが足の数や爪の数が違っていたり(具体的には足が6本だったり爪の数が異様に多かったり、ということ)といった絵が出来上がってしまうことが多いのです。この点については描いてはならないもの(ネガティブプロンプトと呼ぶそうです)をあらかじめ打ち込むことで回避できるというのですが、まあAIも完璧ではなくこちらの意に沿わない絵を仕上げてしまうことも多いようです。(下の絵がそうです。柴犬というよりもクリーチャー感が凄いでしょ?w)
ボクは鉛筆でも透明水彩でも、AIと比べれば数日から数か月という膨大な時間をかけながら少しずつ自分の納得のいく絵を描いていくほうが楽しいし性に合っているという印象であり感想です。ただ誤解してほしくないのは、ボクは決してAIを否定したりするわけでもありませんしむしろここまで絵を簡単に仕上げる技術に感心しているのです。すごい時代に生まれたものです。たとえば「東京の街を歩く若者たち」というプロンプト一つで、あっという間にそれなりの絵が出来上がってしまうことは脅威といってもいいくらいの感動を覚えます。が一方、試しに「空を悠々と泳ぐクジラと海の仲間たち」というタイトルで絵を描きたいと思ったら、手書きの絵ならば思い通りにスイスイ描けるところが、AIだとクジラの質感やそもそも空を泳ぐという絵をうまく表現してくれず現実的な海ばっかりが描かれてしまうイライラ感に襲われてしまうことでしょう。
少し前、「AIは画家にとって脅威だ」というニュースが流れました。でも絵を描く人ほど一度このAIに触れてみるとこのニュースが「疑問点を内包したニュース」であることに気づくのではないか、とボクは考えます。時間をかけて描いた手書きの絵、またこれまでも造られてきたデジタルな部分も使用したアナログな絵、こういった作品はこれからもずっと多くの人に愛され続ける、とボクは思います。大事なことはアートな魂をもって創作すること、そして始めることが第一歩、手書きでもデジタルでもまたAIでも、あなたも「あなたの絵」づくりを始めてみませんか?
2024年2月29日 こけのきもち