二枚(二つ)の鉛筆画

 前回の記事の中で半年ほどかかった鉛筆画のことを述べたのですが、今日はその鉛筆画の完成までの経緯をお話ししたいと思います。

 下の作品がその鉛筆画で、タイトルは「新しいタイムラインの花の開花」です。紙のサイズはF6、マルマンのヴィフアール水彩紙細目です。前述のようにサイズがやや大きめだったため、描き始めからこの絵を仕上げるまでに約半年もかかってしまいました。

 

 一見、これが何の絵であるのか、またこの絵のメッセージが何であるのかはわかりにくいかと思います。それに色彩を伴わない鉛筆画ですしね(ことわっておきますが鉛筆画といえど、原画はこの画像よりもずっと綺麗)。

 この絵で描いた状況は、まずアリの探検家たちがいまして、彼ら探検家たちはいろいろな遺跡を巡って発掘にかかわっている優秀な探検家たち、という設定なのです。そして彼らたちの間では、古くから「まだ見つかっていない遺跡のどこかに、出会えば新しい時間の流れに乗ることができる花がある」という言い伝えがあり、それも「その花の開花に出会った者たちは各々の真の姿を自覚して新しいタイムラインが流れ出す」というものなのです。遺跡には不届き者が近づくことができぬようアリジゴクのオブジェもあったりするのです。

 さて現実世界のボクらの社会状況を振り返ってみれば、2019年以降、感染症騒ぎ等でずいぶんと価値観や個々の行動の様子が変化してしまったと思われます。その中でボクは、これまでの慣習や常識にとらわれず、本来の自分を取り戻す時間の流れが、ゆっくりと、でも確実に押し寄せてきていると感じたのです。

 上の鉛筆画で伝えたかったことは、絵のタイトル通り「古い社会常識を脱ぎ捨てた、本来の自分の行動を進めるタイムラインに気づき、その流れに乗ろう」ということなのです。そのためには「本当の自分とは?」という気づきも必要でしょう。そして大事なことは自分に対して「もっと自信をもって、自己肯定をしていいんだよ?」ということです。ですからこの鉛筆画はこの絵を見てくださった方々へのメッセージであるとともにボク自身への応援歌でもあるのです。そんなつもりで描いた鉛筆画、納得いくまで、納得いくまでと、しかも空いた時間に少しずつ描き進めた結果、描き始めから半年ほどもかかっちゃったんですね。

 さてもう一枚、ボクは以前に一見その絵が伝えたいメッセージがわかりにくい鉛筆画を描いています。それがこの下の絵、タイトルは「トラジ(時間をかすめ取る盗人)が来る!」です。

 トラジというのはもう安直な発想で作った造語で「時間を盗る」からつけた名前です。

 X(旧ツイッター)でのボクのフォロワー様たちはお気づきだと思うのですが、この絵はまず音楽家平沢進氏の名曲『盗人ザリネロ』へのオマージュなのです。できることならタイトルもそのままいただき「盗人ザリネロが来る」にしたかったくらいなのです。そして平沢進氏の「盗人ザリネロ」のサビの部分である、高い空に突き抜けていくようなあの高音の美声に対するボクなりの解釈はこれなんですよ。(他の平沢進ファンの方々、すみません。)

だってね、歌詞だって思い出してみてください?

遠くキミを探してここに来たか

無い あるはずの朝 キミをめざした

 この曲の、上質な古いフィルム映画を観たような心地よさ、ボクはもう心打たれて「さ、一枚、気合を入れた鉛筆画を描いてみるか」と4Hの三菱のユニ鉛筆を手に取ったのですよ。ボクが描きたかったメッセージは「ぼぉ~っと生きていると盗人ザリネロが来て、気づかぬうちに大事な大事なキミの時間をかすめ盗られちゃうよ?」ということなのです。そんな気がしたんですね、その時に。絵を描く理由が成立しましたよね。何か大きく心を揺さぶられた時、ヒトは絵を描きたくなるのです。とボクは思うのです。そしてそれを疑わないのです。

 今回も「この人、何言ってんだか?」な記事になってしまいましたが、ご清聴いやご清読?ありがとうございました。絵を描き始めるきっかけは、毎日何時にもうごめいています。絵の具や大仰な画材はちょっとなぁ、という方は、まず鉛筆からでもいいのです。気持ちが大きく動いた時、絵を描いてみませんか。もしかしたら、あなたの中にも上記の「新しいTLの花」が開花しているかもしれませんよ?

2024年1月14日 こけのきもち